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Sand Holm: "Lange skygger, Tidligt Forår" (Long cloud, early spring)

すべてはこの絵から始まった。作者はサン・ホルム(Peder Marius Sand Holm Nielsen, 1893-1976)、かなりマイナーなデンマークの画家だ。タイトルは『長い影、早春』(Lange skygger, Tidligt Forår)。この絵が持つ妙にリアルな感覚に引き寄せられた。

北国の温度感、淡い光、人の気配 . . . 。この感覚は、リアルと言うよりは、メタリアルなものと呼ぶにふさわしい。そう思って、この種の芸術作品を『メタリアリズム(MetaRealism)』とカテゴライズすることにした。けれどもこの感覚メタなものであるゆえに、具体的かつ正確に定義することは難しい。

さて、日本では殆ど知られていなかったデンマーク絵画だが、2008年にヴィルヘルム・ハマスホイ(Vilhelm Hammershøi, 1864-1916)のまとまった作品が国立西洋美術館で紹介され、さらに2020年には東京都美術館と山口県立美術館で「ハマスホイとデンマーク絵画」展が開催された。

しかしハマスホイの作風がデンマーク絵画を代表するものかと言えば、そうではない。ムンクがノルウェーの最も著名な画家ではあっても、ノルウェー絵画を代表するわけではないのと同様である。

もっとも、ハマスホイの作風が人間の複雑な心理を反映したものだという点に注目するなら、それは19世紀半ばから100年間の、デンマーク絵画の大きな特色の一つなのである。フランスから興った印象主義が、感覚的… 強いて言えば外面的なものに依存していたのに対して、同時期のデンマーク絵画では明らかに心理的・内面的なものが勝っており、内省的な表現に富む作品が多い。

※ タイトルの日本語訳について: 12年前にこの頁を書いた時からずっと、デンマーク語の skygge (影) を誤って sky (雲) と取り違えていた。”Lange skygger, Tidligt Forår” は、「早春の空に浮かぶ細長い雲」ではなくて『長い影、早春』だったのだ! 従って、描かれている雲には心理的な意味はなさそうだ。(2023-05-26)

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